スカイグリーンの恋人
2
新緑の街路樹が見える部屋で、僕らはお互いを慰めあう会を開いていた。
懇親会であり、慰労会であり、失恋報告会でもある。
「お疲れ」
「おつかれさま」
「疲れた……」
廉人の 「疲れた」 に、僕も心さんも苦笑いだ。
青シャツと縞のポロシャツの男は、僕らが予想していたように乱暴な
危険人物だった。
何度も搭乗を繰り返していたのは、ある取引の商談を機上で行っていたらしい。
機内で相手に接触し話をまとめる。
要は機内座席が彼らの会議室だった。
その日の異常を察知したのは小野寺さんで、いつもと違う客の顔ぶれの搭乗に
危険を感じたが、勘だけでは客を拒むことはできない。
何もなければ幸い、だが万が一の事態を想定してみずから乗り込んだ。
そして、事件は起こった。
僕たちが考えたとおり、もしもの事態が起こったとき、僕と心さんが
力で押さえ込むために配置され、廉人は騒ぎの後の処理のために
配置されたようだ。
佐名子さんを守るために僕らは頑張った。
頑張ったが、守ったのは小野寺本部長だった。
「小野寺さん ”佐名子” って叫んで飛び込んできた
あの顔は任務がどうこうって顔じゃなかった」
「そうかぁ……恋人? フリン?
でも 二人が付き合ってるのは間違いないね」
「二人の噂は 本当だったんだな……
だけど チーフの思いは報われないってことか
小野寺さん 既婚者だろう?」
「独身だ 正確には今は独身 離婚してずいぶんたつはずだ
口止めされてたが もう言ってもいいだろう」
ずっと前から小野寺さんを知っていたという心さんの告白に、僕も廉人も
大きく驚いた。