スカイグリーンの恋人
「俺 小野寺さんに ”佐名子に惚れるなよ” って言われてた
そのときは 二人がどんな付き合いかわからなかったが
今日の小野寺さんの声は本気だった」
「身をはって恋人を庇ったんだ 小野寺さんは本気だよ
はぁ……僕がチーフを守るはずだったのに ははっ どうにもやりきれないな」
「伊織も本気だったよな けど残念でした 僕も失恋だぁ
せっかく二人で食事にいけるまでになってたのに 約束もあの騒ぎで消滅
今ごろ佐名子さんは小野寺さんに付きっ切りだろうし
二人で愛を確かめ合ってるだろうし
僕なんて軽く忘れられてるだろうし」
「ふっ 食事なら僕も誘われた チーフと二人でディナーを経験済みだ
廉人 悪いな」
「伊織 経験済みなんてなんだよ いかにも何かありました的なこと言うな
はぁ……あっ 心さん 今夜は突っ込みナシですよ
僕の失恋を労わってください」
「おまえらだけじゃないよ」
「はぁ?」
「あなたが好きです って告白した俺は間抜けだよな
小野寺さんにかなうわけないってわかってたのに」
「えーっ!!」
心さんも佐名子さんが好きだったとは、それこそ意外だった。
廉人と二人で競い合っているつもりだったが、こんなところに伏兵がいたとは。
「心さんもかぁ けどさぁ 誰も勝てなかったんだ
10歳も年上の小野寺さんにもってかれた!
あーっ! バツイチがそんなにいいのか? 四捨五入すれば40歳だろう?
年下の魅力がわかってないなんて 佐名子さん どうかしてるよ」
「廉人 気安く ”佐名子さん” って呼ぶな」
「佐名子さんがいいって言ったんだよ 仕事を離れたら全然いいって」
「そこ 全然はいらん!」
結局……三人とも失恋したという事実が判明した夜だった。
青葉が揺れる木々を眺めながら、僕らは飲み明かした。