スカイグリーンの恋人


翌日、小野寺さんが入院している病院に見舞いに行った。

病室には佐名子さんがいて、かいがいしく世話をしていた。

ちょうど回診のあとだったが、小野寺さんの着替えをなんでもなく手伝う

佐名子さんの姿を見て、二人の関係を見せ付けられた思いがした。



「私はこれで帰るわね 保彦さん 無理しちゃだめよ」


「あぁ わかってる」


「また明日来るわ みなさんごゆっくり お先にごめんなさいね」



保彦さんと呼んだ佐名子さんの顔は、小野寺さんを心配していながら、

どこか嬉しそうだ。 

失恋の痛手がより大きくなった僕らは、気のきいた言葉も言えないまま

佐名子さんを見送った。



「見舞い ありがとう」


「いえ……体はどうですか」


「まだ傷の痛みがあるが そのうちなくなるだろう 

佐名子は傷跡が残ったらと心配しているが 

背中に傷のある男ってのも悪くないと思ってるよ」



小野寺さんの声には 「男の余裕」 が感じられる。

彼女の男は自分だ、と僕らに言っているようにも聞こえる。



「僕も思います 背中に傷っての 哀愁が漂ってカッコいいです」


「そうか 丹沢もカッコよかったぞ あの騒ぎをよく収めてくれた 

声をかけてもらって落ち着いたと 女性のお客様が感動していたそうだ」


「ありがとうございます よかった 力仕事はできなかったけど 

僕も役に立ったんですね」


「冷静にお客さまを誘導できるのは丹沢しかいないと思っていたから 

君に加わってもらった」


「やはりそうでしたか……」


「池田 関谷 君たちもご苦労だった 

腕っ節が強い二人がいたから心強かった ありがとう」



小野寺さんから気持ちのこもった言葉で感謝され、心さんと照れながら

顔を見合わせた。



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