スカイグリーンの恋人


後方に引き上げると、さっそく佐名子さんに 

「嫌らしい目の男」 のことを知らせた。



「50のB 気をつけてください」


「あなたも気がついたのね 気をつけるわ ありがとう 

伊織君 あなたのほうこそ気をつけたほうがいいわよ」



佐名子さんの視線をたどると、僕が苦手とする数人の顔が見えた。

彼女たちの予約が入ったとわかったときから、今日のフライトは憂鬱だった。

男性客のように隣りに座れとは言わないが、むやみに話しかけられて

困ることがある。

無視もできず、なんとか応じてきたが、搭乗回数が重なるうちに態度が

馴れ馴れしくなってきた。



「いつもの方々のお顔が見えるけど……くれぐれも」


「わかってます くれぐれもほかのお客様の迷惑にならないように……

ですね」


「そうよ それにしても あの二人は 少々サービス過剰ね」


「翔と祐馬には 僕から注意しておきます」


「まだいいわ エスカレートするようならお願い

あら 翔君 サインなんてしてるわよ アイドルみたい ふふっ」


「だからホスト航空なんていわれるんです!」


「伊織君……あなたのいう通りね でも 物事は柔らかく考えましょう 

言わせたい人には言わせておけばいいのよ 

私たちは仕事に誇りを持ってるんですもの

それとも 私がこの仕事に伊織君を誘ったことを後悔しているの?」


「いいえ そんなことはありません」



それはない……

あなたに声をかけてもらわなければ、あなたにも会えなかった。



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