華-ハナ-
「…やべっ……絢華、可愛すぎ」



そう言って、舜はあたしの右手を握ってきた。


さっき頭を撫でた時、蒼太と優華に見られていたから、きっと手を握ったんだと思う。


これなら、二人には見えないもんね。



「約束は何時だっけ?」


「二時だよ」


「そっか、じゃあ、そこに寄っていくか?」



舜の視線の先には……


動物園の看板。



「そうだね。蒼太も優華も動物園に行くでしょ?」


「行くー!」



と声を張り上げた優華とは対照的に、蒼太は



「うん」



と素っ気なく答えた。


行きたくないわけじゃないんだろうけど、蒼太はあまり感情を顔には出さない。


だから時々不安になる。


優太が亡くなってから、舜と出会うまではやっぱり寂しい思いをさせていたし、我慢もさせていた。
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