華-ハナ-
「はは、確かにそうだな。……それでも、いつまで経っても華を忘れない俺に、いつまでも結婚しない俺に、親父はきっと諦めたんだ」


「何を諦めたんですか?」


「親父は、華の生まれ故郷を知っていたんだ」


「えっ!?」


「俺が後を継いで、傾きかけていた会社を安定させたら教えてやるってさ」



そうだったんだ。


てことは、最近やっと会社が安定したってこと?



「でも教えられた家を訪ねても、もぬけの殻で……」



あ…


あの家は、おばあちゃんが亡くなったときに売りに出した。


だから……



「あの家を手放して、もう九年になります」


「そうだったんだね。でもそのあとすぐに絢華ちゃんに、ファミレスで会えたんだよ」



でも、やっと教えてもらった家を訪ねて、もぬけの殻だったなんて……


きっと辛かっただろうな。
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