華-ハナ-
「あの」


「ん?」


「お母さんは、……川越さんといて、幸せだったんですよね?」



ふと思った。


こんなこと聞くのは失礼かなとは思ったけれど、でも秘密にしなきゃならないって、そんなの辛すぎる。


あたしだったら、耐えられない。


川越さんは、一つ息を吐いてから



「少なくとも、俺の前じゃ幸せな顔をしてたけどな」



そう言って、スーツの内ポケットから手帳を出して……



「これ」



それに挿んであったものを、手渡してきた。



「……」



それは……


若かりし頃の川越さんとお母さんが、仲良さそうに写ってる……


写真だった。


川越さんに寄り添うように腕を絡めているお母さんの表情が、あまりにも幸せそうで……


なぜか、涙が溢れてきた。
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