華-ハナ-
「絢華ちゃん?何で泣くの?」


「こんなに、幸せそうなお母さんの顔を、初めて見た」



あたしがお母さんの顔を見るのって、すべて写真だけれど、こんなに穏やかに笑っているお母さんは見たことがない。



「それ、どういう意味?華は今幸せじゃないのか?」



川越さんは、眉間に皺を寄せながら、詰め寄るように聞いてきた。


あ…


つい、思ったままに言ったけれど、川越さんはお母さんが亡くなったことを知らないんだった。


どうしよう。


何て言おう。


ずっと考え込みながら口を閉ざしていると



「ママ、ねんね」



圭介が眠そうに、あたしの足の上に乗ってきた。



「圭介、眠い?」



時計を見れば、もう四時近い。


眠いはずだ。
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