華-ハナ-
もしかしたら……


お母さんはあたしを妊娠して、川越さんの傍を離れたのかもしれない。


だって、川越さんのお父さんに反対されていたんだから。


もしそうだとしたら……




あたしがお母さんの幸せを奪ったんだ――…


そんな考えが頭の中を支配し始め、目から涙がポロポロと溢れてきた。



「須藤ちゃん?」



太一さんが、心配そうにあたしの顔を覗き込んできた。



「……」



でも、言葉が出ない。


そんな時――…



「ただいま」



聞こえてきた声に、慌てて涙を拭く。



「お母さん?」



リビングに顔を覗かせた蒼太が、首をかしげながら、あたしのもとへやって来た。


蒼太は勘が鋭い。


三年生だからって、侮っちゃいけない。
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