華-ハナ-
「ん、そうだったな」



そう言った隼人さんは、遠い目をした。


いつ頃のことを思い出しているんだろう。


出会った頃?


優太が亡くなった頃?


あたしに想いを伝えてくれた頃?


それとも……


あたしが舜と結婚した頃?


あたしにとってはずっとお兄ちゃんだったけど、隼人さんにとっては……



「絢華ちゃん」


「ん?」


「俺、絢華ちゃんのことを、好きになってよかったよ」



優太のことしか見ていなかったあたしを、ずっと見守り続けてくれた隼人さん。


いいことなんてなかったはずなのに……


“好きになってよかった”なんて……



「今はもう、妹として見れるから。つか、妹としてしか見れない」



そう言って微笑んだ隼人さんは、今はもうリナさんしか見えてないって言っているようで、あたしまで嬉しくなった。
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