華-ハナ-
.


それからどれだけの時間が経ったのか……


ずっと顔を伏せていた川越さんが、ゆっくりとこちらへ視線を移した。


その目は、さっきとは比べようのないくらいに真っ赤に染まっていて、哀しみの大きさをうかがえる。



「絢華ちゃん」



ようやく絞り出したその声は、少し掠れていて泣いたあとだということが、すぐにわかってしまう。



「恥ずかしいところを見せてしまったね」



そう言って、眉を下げながら笑う川越さんの表情は、物凄く痛々しくて、さらに胸が痛くなった。



「そんなこと、ないです。もっと早くお母さんに会わせることもできたのに……こんなに遅くなっちゃってごめんなさい」



きっとお母さんも、川越さんには早く会いたかったはず。


二人を会わせる決断を、もう少し早くできていればと、後悔が生まれてくる。
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