華-ハナ-
「俺はさ、華がこうなっていたことを知らなかったから……」



“こうなっていたこと”……


“亡くなっていた”ってことだよね。



「だから、絢華ちゃんが渋っていたのも頷ける」



目を真っ赤に染めながらも、その表情は凄くやさしくて……


そんな川越さんにあたしも救われた気がした。



「絢華ちゃん」


「はい」


「華の眠ってる場所へ――…行きたい」



そう言ったとたんに、また顔を歪ませた川越さん。


必死に涙をこらえている。


そんな姿にあたしも、目の奥が熱くなる。



「これから行きますか?」



なかなか言葉を発することができないあたしに代わって、舜が口を開いた。



「頼める?」


「もちろんです」



舜がいてくれてほんとに良かった。
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