華-ハナ-
視線をあげると、すぐ目の前に舜が立っていた。


舜は眉をハの字に曲げながら



「絢華、泣きそうな顔をしてる」



そう言って、大きな右手であたしの左頬を覆う。



「舜……」



そう言った瞬間、ギリギリのところで我慢していた涙が、ホロリと頬を伝った。



「とりあえず車に戻ろう」



そのまま舜はあたしの手をとって、駐車場へと足を進めた。



車に乗っても、ずっと手は握ったままだったけど、会話はほとんどなかった。


でも、居心地が悪いわけではなくて、むしろその方が落ち着いていられたのかもしれない。
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