華-ハナ-
ずっとお母さんの優しい笑顔を見ていたら、不思議な気持ちがわいて出てきた。



『この人なら大丈夫』



そう言われているようで……



「川越さん」



つい、その名を口にしていた。



「ん?」



微かに眉を上げながらそう声に出した人に、視線を戻す。


膝の上に置かれたこぶしにぎゅっと力を入れたあと、



「聞きたいことがあります」



不安と期待でどきどきする胸を鎮めようと、手のひらを左胸に当てて、その場所のシャツをぎゅっとつかむ。



「聞きたいこと?」


「はい」



穏やかな表情をしていた川越さんが、一瞬考え込むような難しい顔を見せた。


その表情を見たとたん、さっき胸の内にわいて出てきた勇気が、シューッと萎んでいくのを感じる。
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