華-ハナ-
それをきっかけに、川越さんの顔を見れなくなり、そのままうつむいた。


さっきまで感じていた不安と期待の入り交じったどきどきは、いつの間にか不安だけを残し、痛みへと変わっていった。



この場には、細長い針がカチッカチッと時を刻む音だけが、リズムよく響く。



『聞きたいことがあります』



と問い掛けたことへの答えが……返ってこない。


何か、勘づいているんだろうか?



そんな重苦しい空気の中、口を開いたのは……


隣に座る舜。



「今の川越さんの気持ちを、教えていただけませんか?」



川越さんの、気持ち?


聞きたいような、聞きたくないような……


でも、これを聞かないと話が前へ進まない。


膝の上におかれた拳は、あれから“ぎゅっ”と握ったままで……


でも、そのおかげで、気持ちが揺れているのを悟られずにいられるのかもしれない。
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