華-ハナ-
川越さんは、大きく息を吸って、それをゆっくり吐き出してから、口を開いた。



「さっき、華と28年分の話をして来た」



28年分ってことは、お母さんと離れてからの時間。



「といっても、たった30分や40分では話しきれなかったけれど」



28年は長いよ。


だって、あたしが生きてきた年数とほぼ同じなんだもん。



「こんなことを言うのは、少し恥ずかしいけれど、俺と華は、ほんとに愛し合っていたんだ」



そう言った川越さんは、右手で後頭部をかきながら、凄く照れ臭そうな表情をしている。


でも、それはわかってる。


だって、あの写真……


二人が寄り添うようにして写っていたお母さんの表情は、幸せそのものだった。



「ゴールデンウィークに、絢華ちゃんと話してから、ずっと考えてた」



さっきまでやさしく微笑んでいた川越さんが、そう言葉を発した瞬間、悲しそうに少し眉を下げた。
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