華-ハナ-
涙で歪んで見える川越さんの表情は、正直どんなものかわからない。


でも、やさしく微笑んでいるような気がする。















「……お父さん」















気付いたら、そう口にしていた。


止めどなく流れる涙を人差し指で拭いながら、もう一度視線を交える。


今度は、表情がちゃんと見えた。



「絢……華ちゃ……今、何て?」



今にも涙がこぼれそうなほどに目を潤ませ、唇を震わせながら話す、お父さん。



「お父さん」



もう一度、その言葉を口にしたら、もうこれ以上は出ないと思っていた涙の勢いが、増した。


もうなにも見えないくらいに視界が歪んでしまったけれど、さっき目の前で潤ませていた瞳からは、きっと涙が溢れている……


交えた視線から、そう感じ取れた。



< 227 / 247 >

この作品をシェア

pagetop