華-ハナ-
地に足をつける度に、ジャリッと音を鳴らしながら、ゆっくりと歩く。



「わっ、圭介っ!」



足場の悪い砂利道でも、圭介は小走りしようとする。


慌てて腕をつかんで抱き上げた。


ここで走ると、ほぼ100%の確率で転ぶ。


そして、膝が血で滲んで、わんわん泣き叫ぶんだ。


毎回同じことを繰り返しているのに、それでもやろうとするから、手におえない。



少し歩いた先で、見覚えのある背中を見つけた。


騒がしく歩いていたせいか、その背中がゆっくりと振り返った。



「久しぶりだね」



相変わらず、柔らかい表情で微笑んでいる、お父さんがいた。


川越さんのことを『お父さん』と呼ぶようになって三ヶ月。


あれから仕事の合間をぬっては、会いに来るようになった。
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