華-ハナ-
一生懸命洗うのを手伝ってくれる蒼太を見ていると、子煩悩だった優太の姿が脳裏に浮かんでくる。


蒼太が悪さをしてもいつも笑顔で見ていた優太。


あたしはその横で一人で目をつり上げて怒っていた気がする。


優太は、そんなあたしのことを見ても、笑っていたんだよね。



優太……


今の蒼太は、あの頃の面影もないほど、しっかりとした男の子に成長しているよ。


きっと、子供の頃の優太もこんな感じだったんだろうね。



「お母さん?」



いつの間にか手を止めて、優太の名前をジッと見つめていたからか、蒼太が首をかしげながら、あたしの顔を覗き込んできた。



「あ、ごめんね」


「泣いてるよ?」


「えっ」



蒼太にそう言われて、慌てて人差し指で目尻に触れた。


あ、ほんとだ……


濡れてる。
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