華-ハナ-
申し訳なくて、そのまま視線を下げた。


でも、ジャリッと音を立てながら、お父さんの靴が視界に入ってきて……


そのままクシャクシャと髪を撫でられながら、“ふっ”と笑みをこぼすような声が聞こえてきた。



「俺には、華との思い出があるから。一年半という短い時間だったけれど、俺の中に、ちゃんと華がいるから。だから、絢華はそんなことを気にしなくていい。蒼太と優華にだけ、優太くんのことを伝えてやればいいんだよ」



言葉はやさしく放たれるけれど、瞳はとても哀しそうに揺れていて……


目が離せない。


なんて、切ない瞳をするんだろう。


でも、舜から見ればあたしもこんな瞳をしているのかな。


心から愛した人を亡くした人の瞳って、こんなにも胸を痛くするんだ。



「絢華、お前は一人で頑張ったよ。愛する人を亡くしたときの哀しみは、本人にしかわからないものだからな」
< 235 / 247 >

この作品をシェア

pagetop