華-ハナ-
入学式で泣いてる人なんていないし……


歯を食い縛りながら、必死に涙を食い止める。


隣に座る舜の袖をつかんでぎゅっと握った。



「ん?どうした?」


「泣きそう」



ヒソヒソと小声で話す。


舜はあたしがつかんでいた袖を離し、あたしの手を握ってきた。


あたしもぎゅっと握り返した。


少し落ち着いた気がする。



結局、涙は流さずに式を終えた。






夕方から優太のお墓参りへ行った。


先のことを考えて、こうやってことあるごとに、優太のお墓参りへ行くことを、やめようと思った時もあった。


でも……


舜が蒼太と優華の気持ちを大切にしてやりたいって、そう言ってくれて……


その言葉に甘えてこうやって手を合わせに来た。
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