羽をくれた君~side陸~【完】
しかも・・・今気付いたがこいつは初夏だというのに長袖を着ていた。
まるでこの傷を隠すかのように。
そっと手首を触ってみると、奈緒の表情が歪み、起きそうになる。
なんなんだこの痣・・・
不審に思いながらも俺は眠りについた。
翌朝、新聞配達の仕事から帰ると奈緒が起きていた。
散乱してた毛布などが綺麗にたたまれており、床に正座している。
俺の顔を見るなり、どこ行ってたのかと心配そうに言っている。
まるで忠犬ハチ公のようだ。
するとハチ公・・・奈緒が、俺の親は?と聞いてきたので死んだと応えると困惑した顔つきになった。
親の事をあっさり聞いてきたのなんてこいつが初めてだな。
他の奴らは皆俺の過去に触れようとはしない。
亮すらも広樹に聞いてんのかしんねーけど、親の話や俺の深いところまでは追及はしない。
今までの女もそうだ。
まぁ、だから楽だったんだろうけど。
こいつもあんまめんどくさくなるよーならに切った方いーかもしんねーな。