羽をくれた君~side陸~【完】
「・・・あたしずっと好きだったのに!」
表情は見えなかったが涙声だった。
服を着た女は、ドタドタと足音を鳴らしながら部屋を飛び出して行く。
この女と知り合ったのは昨夜の事で。
乱華の奴らと宅飲みして、そこに亮の女友達だとあとからやって来た女だった。
名前はあかね・・・確か茜って女だ。
髪がふわふわしてて、俺が酔っぱらってそいつの髪の毛に指をくるんだら、茜は顔を赤らめて言った。“陸の事ずっと前から気になってたよ”と。
つけていた香水が百合と同じサムライウーマンだった。
俺はこの女に百合を重ねて抱いていたのかもしれない。
目をつむり、心で百合を感じていた。
俺はこのまま一生誰も愛さないし 愛されないで生きていく。
そう思っていた。
だからこの女が気に入ったから抱いたわけではない。