羽をくれた君~side陸~【完】
仕事は夕方に終わった。
日曜だということもあり、街は人で溢れかえっていて、道路も混んでいる。
俺は裏道を抜けてアパートまでたどり着いた。
部屋に奈緒の姿はなかった。
今日一日何の連絡もない。俺はまたイラついて煙草を吸おうとしたが、煙草の箱が空だった。
「はぁー・・・何イラついてんだよ俺」
煙草の自販機はここから歩いて2.3分の所にある。
そこへ向かう途中、俺は自分の目を疑った。
あいつが。
奈緒が広樹と2人でいる。
へぇ、そういうことか。広樹と遊んでたってわけね。
俺は奴らに気付かれない様に近くまで行った。
その時、広樹が奈緒を抱きしめた。
「陸より先に出会いたかった・・・」
広樹の声がかすかに聞こえる。
あいつは今まで俺の女に手を出した事がない。
そういうことだけはしない奴だと思ってた。