羽をくれた君~side陸~【完】
アパートに着いても気まづそうに俺の後ろをついてくる。
どうしたのかと聞いても何でもないと笑顔でごまかされた。
あいつが話したくないなら今はあのくそ親父の話題を出すのはやめよう。
今は奈緒をゆっくり休ませるのが先だ。
だが俺の隣に座った奈緒はそわそわしていた。
そしてぽつりぽつりと親父の話を始めた。
あの男は本当の父親ではないという事。
母親の再婚相手で小学校から一緒に住んでいると言う事。
俺は静かに耳を傾けていた。
次第に奈緒の声が掠れていく。無理に笑顔を作っているのもわかっていた。
奈緒を両手で力いっぱい抱きしめる。
細くて華奢な奈緒の体は少し力を入れただけでも折れそうだ。
「陸さん・・・怪我してない?」
こんな時も俺の心配をする。
「ん。お前のほう怪我してんだろ」
奈緒の腕にはまた痣ができていた。
ネクタイで縛られたからだろう。