ラピスラズリの恋人
ゆっくりと箱に戻される、ダイヤのリング。


そこでやっと男の顔をまともに見た俺は、その表情に悲しみの色を浮かべている事に気付いた。


ふと頭の中を過ぎる、違和感。


それは程なくして、一つの仮定を生み出す。


この男の話がどこまで本当だったのかはわからないけど、少なくとも今この瞬間も瑠花を想っているのは間違いないのだろう。


だけど…


こんな風に傷付けるのなら、この男の傍にいて欲しくは無い。


「……式場は、俺の方でキャンセルしておくから」


男ももう最初の言葉を撤回するつもりは無いのか、リングの入った箱と合鍵を受け取って足早に立ち去ってしまった。


< 12 / 100 >

この作品をシェア

pagetop