ラピスラズリの恋人
瑠花はコーヒーカップに視線を落とし、みるみるうちに瞳に涙を溜めた。


長い睫毛を震わせて唇を噛み締める横顔に、胸の奥がズキリと痛む。


声を掛けると、彼女がハッしたようにハンカチで目元を押さえたから、慌ててその手を制した。


「そんなに強く押さえたら、後で腫れるよ」


腫れた瞳は、時間が経てば元に戻るけど…


その心に刻まれた傷は、きっと簡単には癒せない。


「少しだけ、付き合ってくれない?」


どうしても放っておけなくてそう訊いた俺に、瑠花は戸惑いを見せながらも頷いた。


リングを失くした彼女の左手の薬指を隠すように、そっとその手を掴んで歩き出した。


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