ラピスラズリの恋人
自分の名前を何故知っているのかと訊く瑠花に、予め用意していた言い訳を口にする。


「さっきの彼が来る前に、君が『笑顔よ、瑠花』って言ってるのが聞こえて来たんだ。俺、隣のテーブルにいたから」


本当の事だけど、“嘘”。


俺が瑠花の名前を知っているのは、青空園で初めて彼女を見た時に理事長から名前を教えて貰ったから…。


ついでに言えば、年齢やOLをしている事だって知っている。


そんな俺に謝罪を零した瑠花にその理由を尋ねると、彼女は『お見苦しい所をお見せしちゃったから』と自嘲気味に微笑む。


その表情は酷く傷付いている事を隠すようで、心の中にいるあの男の存在を思い知らされた。


< 17 / 100 >

この作品をシェア

pagetop