ラピスラズリの恋人
去年の1月――。


俺は、ホテル内にあるレストランで商談を済ませて取引先の人間を見送った後、秘書の相模(サガミ)だけを帰らせてラウンジで一息入れようとコーヒーを注文した。


ブルーマウンテンの香りに肩の力が抜け、やっとホッとする。


それでも、頭の中はやっぱりさっきの商談や仕事の事ばかりが占めていて、コーヒーカップを片手に眉間にシワを寄せていた。


そんな時…


「……笑顔よ、瑠花」


ふとポツリと聞こえて来たのは、聞き覚えのある名前だった。


“ルカ”……?


その二文字に反応してすぐに隣を見ると、目の前には確かに“あの少女”がいた。


< 5 / 100 >

この作品をシェア

pagetop