ラピスラズリの恋人
口実を見付けられないまま開き掛けた唇は、瑠花が手にした箱によって閉じてしまった。


仕事上、見慣れた小さな箱。


予想通りの物をそこから出した瑠花は、左手の薬指にそれを嵌めた。


光を放つ、ダイヤのリング。


結婚、するのか……


そういえば、青空園の理事長から瑠花に良い人がいる気配があると聞いていたけど、その事実を目の当たりにして胸の奥が小さく痛んだ。


フッと息を吐いて、カップに口を付ける。


そうだった……


俺は、瑠花が幸せになれるのなら、それで良い。


舌に触れたコーヒーの味に冷静さが戻って、早まる寸前だった自分に苦笑を零した。


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