ラピスラズリの恋人
「今日は俺達が出会った日だからね」


瑠花の耳元で優しく囁くと、彼女が目を見開いた。


「……覚えてたんですか?」


「瑠花との事を忘れる訳がないよ」


すかさず答えながら差し出したのは、一輪の薔薇(バラ)。


淡いピンクに染まる花びらは美しく開き、明日には一番の見頃を迎えるだろう。


「出会いの記念にと思ってね。……無駄にならなくて良かったよ」


それを見越して選んだ薔薇を瑠花に渡すと、彼女は瞳にうっすらと涙を浮かべて幸せそうに微笑んだ。


「嬉しいです、すごく……。ありがとうございます」


瑠花はまるで壊れ物を扱うかのように、それにそっと鼻先を寄せた。


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