ラピスラズリの恋人
心の奥底から込み上げて来るのは、切ない程の愛情。


幸せな今、抱いた愛情を苦しく感じてしまうのはおかしいのかもしれない。


だけど…


心を占める温かな愛情の中には、確かに切なさが混じっていた。


「えっと……」


瑠花は突然抱き締められた事に驚いてはいたみたいだけど、顔を上げた彼女は穏やかな表情をしていた。


「理人さん」


柔らかな声に紡がれる名前に、幸せが広がっていく。


「ん?」


「あたし……1年前の今日に理人さんが手を差し延べてくれた事は、きっと一生忘れません」


キッパリと言い切った瑠花は、その名前に相応しい花のように綺麗な笑みを浮かべた。


< 85 / 100 >

この作品をシェア

pagetop