ラピスラズリの恋人
全く……


君はどこまで……


声に出してしまいそうだった言葉は、敢えて心の中で留めておく。


あの日、必死に涙を隠そうとしていた瑠花に声を掛けたのは、俺の自己満足に過ぎない。


だって…


俺は瑠花が思っている程、優しい人間じゃないから…。


ただ、もし俺がこの事を話したとしても、彼女はきっと今のように感謝の言葉を紡いだに違いない。


荻原瑠花は、そういう女性(ヒト)だ。


「えっと……何だかすみません、急にこんな事……。でも、ちゃんと言っておきたくて……」


ほら……


向けられた笑顔は瑠花そのものを表しているように優しくて、いとも簡単に心を鷲掴みにされてしまう。


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