ラピスラズリの恋人
「おいで」


両手を広げれば、瑠花は少しだけ躊躇した後で怖ず怖ずと近付いて来た。


手を伸ばせば簡単に捕まえられるけど、彼女が自分で俺の元に来てくれるのを待ち、その体を抱き寄せた。


「機嫌、直った?」


「別に怒ってる訳じゃ……」


「わかってるよ。恥ずかしいだけだよね?」


クスクスと笑った俺に、恨めしげな視線が飛んで来る。


「理人さんって、時々意地悪ですよね……」


「好きな子はいじめたくなる性質(タチ)なんだ」


「もう……」


足の間にすっぽりと収まる瑠花が眉を寄せるのを横目に、彼女のうなじにそっと唇を落とすと甘い吐息がバスルームに響いた。


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