ただひとつ。Side Story
「…お前も失礼な奴だ。」



「…あははっ……!しかし懐かしいね!結局…卒業以来っ?」


「そうだな。」


「あんなにかっこいいこと言っておいて、結局大人になってからの再会だったねえ?」


「…あの頃は…、まだ子供だったんだよ!」


「確かにね。若かったなあ……。あ、ねえ。今も地元にいるの?」


「おー、いるぜ、いつまでも。」


「そうなんだー…。」


「…お前は?今何処に住んでるの?」


「神奈川!旦那の転勤でなかなか落ち着かないよ。」


「そっか。大変だな。」


「ん~…、まあ楽しいけどね。」


「じゃあ今里帰りしてるの?」


「うん!もうすぐお産だから……」



「…………。」



彼女のお腹は…前に突き出すように膨らんでいる。



「…そうか~、お前も母ちゃんか。おめでとう!肝っ玉かあちゃんになるんだろうなあ。」


「和志こそ結婚したって聞いたよ。子供は?」



「まだいねーよ。ったく頑張っているのが空回りした気分だ。」


「ヤダ、エロおやじ。」


「…うるせーよ!」



もう…


何年も会っていなかったことが不思議だった。



お互い歳を重ね、今こうして笑い合っている……。




加藤。


俺らは……



ちゃんと約束を守ったんだな。




もう胸が苦しくなることはないけれど……



こんな偶然が嬉しくて、涙が出そうだ。





「…いちか!」



どこからか……


加藤を呼ぶ声。



俺はその声の主を探した。



「………あれ?」



見覚え…あるぞ。



「旦那呼んでる。行かなきゃ…。」


「…誰だっけ、俺…知ってる奴じゃねーか?」


「……知ってるよ。『藤倉先輩』だもん。」


「……ええっ!!」



…マジか……。


中坊の恋がゴールイン?!

それ、相当珍しいぞ!




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