ただひとつ。Side Story
しかし……



浮かれている世の中とはうらはらに、悲しみに満ちている人がいることも否めない。


『事件』があったと…


職場である警察署より連絡が入って行ったきり……



君は帰って来ない。




『イヴの日に事件?…事故とか?』



『…ん。夜には帰れるといいけど。…あ、もしもの時はケーキだけ残しておいて。ひよりが作るんだろ?』



『うん。』



『じゃあ、行ってくるわ。』



『…行ってらっしゃい。』



『いってらっしゃ~い!』


『お。日向!ちょっと行ってくるからな~、母さんを頼むぞ。』



『…おう!』



そうやって、同じ顔をした父と子は……



ガッチリと腕を合わせて、恒例の挨拶で別れた。



彼は……


職場の話は一切しない。


守秘義務があるから当たり前だろうけど…




それでも、まるで休日がないかのように働き続けるこの師走…。


へとへとになって帰ってきても、何も言わず…


いつものように、息子と遊び…


私とたわいない会話する。


辛くないのかな…?

疲れないのかな…?



私はいつも…
そんなことを思い悩む。








< 274 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop