恋に恋して恋をする。
「着いたよー。19号室ね、はーい」


坂下さんは恐らく先に中にいる誰かに電話しながら店に入った。


「すいませーん。友達中にいるんで入っていーですかぁ?」


カウンターに受付の人がいるので、一応声をかけている。


「あ、19号室ですか?どうぞ」


ん!?


聞き覚えのある声に目をやると、店員さんも少し驚いた顔でこちらを見ていた。


う…嘘でしょ……


メガネもしてないし、前髪はバンダナの中に隠れているけど、間違いなく奏くんだった。


坂下さんと矢口さんは全然気づいてないみたいで、


「ちょっとカッコよかったかも~」


なんてクスクスしながら部屋へ向かった。


私もとりあえず何もなかったかのように着いて行く。


けれど、動揺しまくって足元がフラフラした。



休みの日に偶然出会うなんてさ、本来なら嬉しいはずなのにさ……



ホント、神様は意地悪だよ。
< 32 / 113 >

この作品をシェア

pagetop