恋に恋して恋をする。
「痛っっっったぁー!!」


サボテンの頭を右手でモロに受け止める。


「小島さん!大丈夫?」


奏くんが慌ててサボテンを私の手から引き離してくれた。


「あんまり触らないほうがいいわ。
こっちに連れて来て」


三上先生は私をイスに座らせて、そっと手の平を確かめた。


「大丈夫。そんなに深く刺さっているのはないわ。ピンセットですぐ取れるから」


「すみません……」


わーん!恥ずかしすぎるぅ!


「先生、ボクがやっておきますよ」


奏くんは先生が持っていたピンセットに手を伸ばした。


「さっき職員室に戻るよう言われてたじゃないですか」


「そうだけど、でも……」


「それにボク、トゲ抜き得意なんです」


奏くんは営業スマイルチックなにっこり笑いだった。


三上先生もその笑顔に押しきられたようだ。


「そう?じゃあお願いね」


先生は私にも軽く目配せをして、パタパタと部屋を出て行った。




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