恋に恋して恋をする。
「奏くん!ちょっと待っ……」


慌てて追いかけようとして、自分の足に引っ掛かって転びそうになる。


履きかけだった靴が片方すっぽ抜けた。


どうやってすっぽ抜けたのか、右の靴は宙を舞って近くのゴミ箱にホールインワンした。


私の体は奏くんが受け止めてくれて無事だったのだけれど。


「だ、だいじょ……」


ぶ、はほとんど噴き出して笑っていた。


「あははははっ。やっぱ小島さんてドンくさいね」


奏くんは片手で私を支えながらお腹をかかえて笑った。


「そ、そんなに笑わなくていーじゃん」


顔から火がふいてるみたいに熱い。


「ごめんごめん。ちょっと待ってて」


奏くんは「これに足乗せな」と言って自分の鞄を差し出した。


そのまま靴を拾いにゴミ箱まで走ってくれた。


私はその背中をじっと見つめた―――



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