恋に恋して恋をする。
「私、奏くんと口聞きたくなくて避けてたんじゃないよ」


靴のかかとをしっかり押し込みながら、何でもないふりをして話す。


「奏くんにまたしても図星つかれたから、恥ずかしくて避けてたの」


それに、心の中が全部読まれそうで、怖くて……



「てかぶっちゃけ今もかなりドキドキしてる。バレてるかもしんないけど。でもこんなの意識しないほうがおかしいよね?」


奏くんと繋いだ手にぎゅっと力がこもる。


「そっちは彼女いたみたいだけど、こっちは男子の免疫ないの。だからさ、こんなさ、お姫様あつかいみたくされちゃったらさ、奏くんが王子様みたいに見えちゃうかもしれないじゃん!
そっちはそーゆーのもお見通しなんだろうけど、もーごめんね!単純で!」


何だか止まらなくてまくし立てるように言った。
最後のほうは自分でも意味不明だった。


はぁはぁと、私の荒い息づかいだけが聞こえる。



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