恋に恋して恋をする。
「奏くんって、ホンット意地悪だね」


「うん。ごめん。俺ってこーゆーやつなの」


いつか聞いたようなセリフを言う奏くん。


「うん…。でも優しいのも奏くんだよね」


優しいから、気を持たせないように意地悪言ったりするんじゃないかな?


「でもね、私、意地悪な奏くんも嫌いじゃないよ」


「…………。小島さんってマゾ?」


大真面目な顔のふりをしてる奏くん。


「もー!違うから!」


また手を振り回すと、奏くんはひょいと逃げた。


「うそうそ。ごめんごめん」


「真面目に言って!」


「じゃあ、また普通に話しかけていい?」


急にそう返されて、ちょっとびっくりしてしまう。


「そ、そんなの全然いーよ」


ちょっとツンデレ気味に返事をすると、奏くんは「よかった」と言って笑った。


私の一番好きな、ふっと柔らかい笑顔で。



「じゃあ、また明日ね」



そう言って夕日の中に消えて行く後ろ姿を見送りながら、鼻の奥がツンとした。


また明日、と別れることが、何だか嬉しくてたまらなかった。

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