騙し、騙され、愛の渦
さすがにもう精神的にも限界で、今日という、今日は仕返 しをしてやろうと思う。


翔太はお酒を抜きにすれば、気付かい上手で優しいし、仕 事にも真面目に行くタイプだし、容姿も俗に言うイケメン タイプだろう。


けれども、お酒が絡むと、強情で自分勝手、所構わず寝てしまい、蹴り飛ばしてやりたい位、イラつく存在。


私はクローゼットの中のボストンバッグを持ち出し、近所迷惑にも関わらずに玄関の戸を思い切り、閉めた。


ブーツのヒールを折れそうな位に階段に叩きつけて、降りて行く。


道路に出て、長年暮らしたアパートを眺める。


今では喧嘩ばかりだけれども、翔太と笑ったり、抱き合っ たり…楽しくて、毎日が輝いていたよね。


―――そう思ったら、涙が一気にボロボロと溢れ出した。

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