Special Edition
「家元?……家元?!」
「あっ、はい、すみません。参りましょう」
俺は平静を装って、運営スタッフと共に
茶席会場へとその場を後にした。
物凄い人込みの中、
脱力感と焦燥感……そして、
家元として茶を点てる事への緊張感。
俺は何とも言えぬ感情に押し潰されそうに。
野点席(屋外の茶席会場)へ到着した俺は
視界に入った光景に思わず凍りついた。
「………ゆ…の……」
自然と零れる愛妻の名。
彼女は俺のすぐそばで……。
『お嬢ちゃ~ん!こっちにも頼むよ~』
『はぁ~い!!ただいま~!』
体躯のいい男連中に囲まれながら
何故か、小間使いのように働くゆの。
うち(香心流)の一門の人間でさえ
ゆのを小間扱いしないというのに、
よりによって、俺の愛姫を……。
俺はグッと拳を握りしめ、
奥歯からギッっと音がなるほど
―――――ブチギレ寸前!!
しかし……。