Special Edition


「隼斗さん、ここ……」

「ん」


ゆのは俺のもとへと駆け寄って来た。


―――――そう、ここは5か月前に

ゆのと訪れた茶道協会の敷地内。


俺が幼い頃、

『秘密基地』と呼んでいた

………とっておきの場所。


会館内と違い、ここ(裏庭園)は

完全なる『立ち入り禁止区域』

母親でさえ知らない……

俺と親父の秘密のオアシス。


稽古が辛くても必死に涙を堪えていたあの頃、

稽古上がりに親父がこっそりと連れて来てくれた場所。

誰も居ないこの場所だけは、

俺が唯一、涙しても許される場所でもあった。


家元候補として厳しく育てられた俺は、

泣く事さえ許されず、

常に人の目を気にして、畳に正座していた。


そんな想いを全て、

この夜景が浄化してくれていたんだ。


俺にとって、己の心と素直に向き合える

―――――そんな場所でもある。


ゆのが高台の端から眼下を眺めていると、


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