Special Edition


寿々さんは涙目で聞き返して来た。

恐らく、奴との事があるから反対されると思っている。

だからこそ、余計に連れて行きたい。


寿々さんは誰からも愛される資格があるんだよ……と。



寿々さんはあの一件以来、愛される事に躊躇いがあるようだ。

俺の両親に行き会えば、きっとまた同じような想いをするのでは……と思うらしい。


だけどそれって、俺との未来を否定してるのと同じだから。

だから、俺はちょっと強引かもしれないけど、きっかけが欲しいんだ。


彼女の心の全てを……。




「ね?そんな深く考えなくて大丈夫だよ。ちょっと変わってるけど、筋はちゃんと通ってるし。何より、母親が寿々さんとキッチンに立つのを夢にしてるからさ」

「へっ?」

「実は……うちの母親、料理が一切出来ないから」

「え?」

「ゆで卵を作ろうとして、鍋ごと爆発させて以来、キッチンには立ってないらしい。父親がそうさせてたらしいんだ。まぁ、家が火事になっても困るし、爆発事故にでもなったら、ご近所にも迷惑がかかるしね」

「…………それ、本当なの?」

「うん。これ、マジな話だから」


寿々さんは呆気に取られて俺の顔をじっと見据えている。

だから――――。


< 313 / 477 >

この作品をシェア

pagetop