Special Edition


「寿々さん、もしかして、緊張してる?」

「し、してるよっ!しない方が変じゃない?」



一颯くんのご実家から程近い最寄り駅から、ご実家へと向かっている道中。

荷物の殆どを一颯くんが持ってくれて、私は手土産に持参したケーキを大事に抱えている。


北風が肌を刺激している筈なのに、全然寒くない。

それくらい、今の私、緊張している。


やっぱり、恋人のご実家へ伺うのは緊張して当たり前。

一颯くんは『する必要ないのに』って言うけど、そういう問題じゃない!


きっと彼だって、私の実家に行くってなったら緊張するに決まってるんだから。



最寄駅から10分程で到着した、本間家。

白いフェンスに囲まれた今風の住宅。

外壁は焦げ茶色で重厚感がある。

一颯くんが門塀のフェンスを開けてくれて、私を中に促した。


「ちょっと待って!」

「ん?」

「風に煽られて髪が乱れてない?」

「ん、大丈夫だよ」

「ねぇ、グロスがはみ出てないかな?」

「ん、大丈夫」

「ねぇ………」

「大丈夫だよ。寿々さんは、そのままで」

「でも……」



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