Special Edition
今すぐ逃げ出したい衝動に駆られる。
ここまで来て引き返すのもどうかと思うけど、やっぱり初めてお邪魔するのに『大晦日』って、失礼だよね?
家族で祝う新年を、私みたいな部外者が居ていいのかしら……?
地面に足がピタリとくっ付いているみたいで、全く動こうとしない。
そんな私に気付いた彼は門の外へ回り、インターホンを押した。
「はい」
「俺だけど。悪いんだけど、玄関開けて」
「おぅ、今行く」
インターホンから聞こえたのは、若い男性の声だった。
今のが、お兄さん?
一颯くんから聞いて知っている。
彼には5歳離れたお兄さんがいる事を。
間もなくして、玄関ドアがガチャリと開いた。
ドアの隙間から姿を現したのは、一颯くんと同じくらい背の高い男性。
「いらっしゃい」
「はっ、初めましてっ!」
緊張のあまりどもってしまった。
「とりあえず、寒いから中にどうぞ」
「あっ、はい!」
「ただいま」
「母さんは、さっき買物に出掛けた」
「へぇ~、そうなんだぁ」
一颯くんの後ろに隠れるようにして、玄関の中へ入った。