Special Edition
「刑法208条 暴行罪、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処すぞ」
「出た」
「俺に傷を負わせたら更に厄介だぞ。刑法204条 傷害罪、人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するとある」
「新聞の一面に載るようなことを彼氏がしたら、別れるから」
「俺と、……別れたいの?」
「………聞かなくても分かるくせに」
ぷくっと膨れ気味の美雨の頬にチュッとリップ音が響く。
そんな美雨は柾の方に体を向け、おねだりするみたいに顔を近づけると。
柾は容赦なく突き出した唇を指でつまんだ。
「んっンッ~ッ」
「どちら様?……撮影でも無いのに、大事な指輪外しっ放しの奴は」
「ッ……」
美雨は柾の言葉で視線を急降下させた。
すると、柾の服を掴む自身の指先に光るものがない!!
「ごめんっ」
柾が手を離した瞬間、間髪入れずに謝罪の言葉を発したが、
柾の表情は変化なし。
仕事柄、クールフェイスを装うのはお手の物の柾にとって
感情を押し殺すのは得意中の得意。
心に余裕があるわけではないが、恋人を煽るくらいは朝飯前。
美雨はショルダーバッグの中からリングボックスを取り出し、
それを冷視線を向ける柾に差し出す。
「ん」
それは、柾の手によって嵌めて貰いたいと言ってるわけで。
「『ん』じゃ、分からないぞ?人に頼む時は誠意をもって頼まないと」
「お願いしますっ、……着けて、チュッ」
時に言葉より手っ取り早い方法がある。
言うより行動すべしというやつだ。
美雨は可愛らしくチュッと柾の唇にキスを。