Special Edition


「美雨」

「ん?」

「バレたっぽい」

「……大丈夫よ」


ウインドウショッピングを楽しみながら、

私たちの想い出の場所目指して歩いていると

何人かのファンが少し距離を取ってついてくる。


「3数えたらダッシュするぞ」

「OK」

「3・2・1……ダ~~ッシュ!!」


私の手を彼がギュッと握り、

さっき寄ったお店で買ったキャップの鍔を指で押さえながら

ちょっとスリリングな感じを満喫して

彼と夜の逃避行?を楽しむ。


ヒールじゃなくて良かった。

歩きやすいようにスニーカーを履いてる私は、

久しぶりに全力疾走した。


このところ、アクションシーンを沢山取っているせいか

体力づくりを頑張っているお陰もあって意外と走れる。


「美雨っ、……やっぱ早いなっ」


少し息が切れ気味の彼は苦笑いを浮かべている。

そんな彼の耳元に近づいて。


「コスモまで競争ね?私に勝てたら、ご褒美あげる」

「え、マジで?」

「ん」

「んじゃあ、遠慮なく」

「えっ?!」


騙された。

息が切れ気味だったから疲れてるのかと思ったのに。

彼は掴んでいた私の手を離して、走り出した。


「ずる~~いっ!待ってってばぁ~~!」


夏の夜の渋谷の街は眠らないのか、

どの通りを通ってもたくさんの人が歩いている。

そんな人の波を縫うように駆け抜け、

手で合図を送る彼の背中を追う。


その昔。

私たちが小学生の頃、いつもしてた『賭けダッシュ』。

勝った方が負けた方のお願いを聞くという暗黙のルールで。

大概、私が勝ってたのに……。

< 423 / 477 >

この作品をシェア

pagetop