Special Edition
「美雨」
「ん?」
「バレたっぽい」
「……大丈夫よ」
ウインドウショッピングを楽しみながら、
私たちの想い出の場所目指して歩いていると
何人かのファンが少し距離を取ってついてくる。
「3数えたらダッシュするぞ」
「OK」
「3・2・1……ダ~~ッシュ!!」
私の手を彼がギュッと握り、
さっき寄ったお店で買ったキャップの鍔を指で押さえながら
ちょっとスリリングな感じを満喫して
彼と夜の逃避行?を楽しむ。
ヒールじゃなくて良かった。
歩きやすいようにスニーカーを履いてる私は、
久しぶりに全力疾走した。
このところ、アクションシーンを沢山取っているせいか
体力づくりを頑張っているお陰もあって意外と走れる。
「美雨っ、……やっぱ早いなっ」
少し息が切れ気味の彼は苦笑いを浮かべている。
そんな彼の耳元に近づいて。
「コスモまで競争ね?私に勝てたら、ご褒美あげる」
「え、マジで?」
「ん」
「んじゃあ、遠慮なく」
「えっ?!」
騙された。
息が切れ気味だったから疲れてるのかと思ったのに。
彼は掴んでいた私の手を離して、走り出した。
「ずる~~いっ!待ってってばぁ~~!」
夏の夜の渋谷の街は眠らないのか、
どの通りを通ってもたくさんの人が歩いている。
そんな人の波を縫うように駆け抜け、
手で合図を送る彼の背中を追う。
その昔。
私たちが小学生の頃、いつもしてた『賭けダッシュ』。
勝った方が負けた方のお願いを聞くという暗黙のルールで。
大概、私が勝ってたのに……。