Special Edition
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二人の想い出の場所。
コスモプラネタリウム渋谷。
その入口脇にある階段前に
俺は彼女より先に到着していた。
そして、彼女の姿を捉え
両手を広げて待っていると……。
「っ……」
美雨は躊躇せずに飛び込んで来た、俺の胸に。
仕事終わりにジムに通い、
数年前からクレー射撃も趣味で始めた。
その射撃場で、先月コーチから意外な言葉を聞いた。
『女優の来栖 湊さんもここに通ってるんですよ』って。
これまでも何人か芸能人をコーチした経験があるのは知ってたが、
まさか、同じ人に教わってるとは思ってもみなくて。
『スナイパー役』すると言ってたから
恐らく、それに必要な練習なんだとすぐに分かった。
それ以外にも『アクションシーンの撮影』もあるし
俺も負けてられないと、このところ鍛えた甲斐があったようだ。
悔しそうに上目遣いの彼女の頭を優しく撫でて
人目も憚らず、おでこにキスをする。
例え、彼女が『来栖 湊』だとバレてしまっても
『俺のフィアンセ』なんだと知らしめるためにも。
さて、そろそろ賭けに勝ったご褒美でもおねだりしようかな。
「約束、……忘れてないよな?」
「うん、もちろん」
「どんなお願い事でも聞くんだよな?」
「ん」
美雨は真剣な表情で俺を見つめている。
22時を回ろうとしていて、
辺りには人がちらほらいる程度。
明かりが点在しているとはいえ、
俺らに気付いてる人はいなそうだ。
みーなファンの追っかけもいないようだし。
俺は彼女の両手を掴んで真っすぐ見据えた。